2019年に設立された NLP(自然言語処理)に特化したスタートアップの Aiello(犀動智能)は、最も象徴的な製品であるスマートスピーカー「AVA(Aiello Voice Assistant、小美犀」を全面的にアップグレードし、大規模言語モデル「GPT シリーズ」導入により、旅行・宿泊事業者に対し、より便利なソリューションを提供すると発表した。
*記事出展:BRIDGE | コロプラネクストも支援、ホテル客室用AIアシスタント「AVA(小美犀)」がChatGPT連携
2023.05.03
著者:Meet Global(創業小衆)
AVA はすでに、台湾、日本、シンガポール、マレーシア、タイにある、60のホテルの10,000室以上客室に導入されている。宿泊客は AVA に「近くに何があるか」「チェックアウトは何時か」などの質問を直接することができ、ホテル事業者の顧客対応にかかるコストを削減することができる。
大規模な言語モデルの導入により、AVA は「ホテルが AVA を導入するのに必要な時間」と「使いやすさ」の2点が最も大きく改善される。
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同社の創業者兼 CEO Vic Shen(沈書緯)氏は、このアプリケーションが単なる OpenAI API ではなく、その API の上に Aiello が開発した言語モデリングフレームワークであることを強調している。
例えば、宿泊客からの質問は、まず Aiello の言語モデルに入力され、どの言語モデルで返信すべきかが決定される。この方法のメリットは、最初に最適な言語モデルを見つけられることだ。例えば、OpenAI の GPT 系では、1問1問にコストがかかり、回答時間が長くなる。質問がシンプルだったり、意図が明確で回答に誤りが含まれてはならないケースでは、GPT モデルを使う必要はない。
一方、大規模言語モデルを導入することで、回答はより使いやすくなる。例えば、宿泊客が「プールでスイミングキャップは被る必要はあるか」と質問した場合、これまでの言語モデルでは、データベースに答えがないため、この質問に答えられなかったかもしれないが、GPT は質問を分解して、人間的な回答をすることができる。
また返答が人間的なものになるので、宿泊客の利用率を大幅に向上させる可能性がある。また、Shen 氏は、AVA の導入されたレストランをソーシャルメディアで紹介すると、露出が増えると述べた。宿泊客は好奇心が強く、面白さや便利さを感じれば、ソーシャルメディアに写真を投稿してくれるからだ。
企業側では、もうひとつ、より直接的な影響として、導入にかかる時間が挙げられる。従来は、ホテル側がルールや回答を AVA に教えるのに1~3カ月かかっていたが、新しい言語モデルでは、書籍でも PDF でもマニュアルを Aiello に渡すだけで、短時間で情報を AVA に取り込むことができ、追って回答を修正することも可能だ。
また、Aiello は、顧客に提供するサービスをより便利なものにすべく、仕事を直接割り当てることができるホテルのタスク管理プラットフォームを開発した。これには、AVA 収集したデータを Aiello がホテル経営者にフィードバックし、オペレーションの最適化ができるデータ分析機能を組み込んでいる。
チームワークを支援する AI 書き起こしツール「Vocol.ai」をローンチ
Aiello は AVA だけでなく、大規模言語モデルをベースに、自然音声認識による書き起こしと解析プラットフォーム「Vocol.ai」を発表した。
Vocol.ai は、書き起こしと会議のまとめという最も基本的な機能を持ち(音声ファイル、電話、動画のアップロードにも対応)、また、来訪でも、ミーティングでも、ビジネス開発でも、チームで直接コラボレーションして書き起こし内容を修正できるため、働く人の生産性を高めるツールになることが期待される。
元 Google 台湾で社長を務めた Lee-Feng Chien(簡立峰)氏は、次のように述べている。
大規模言語モデルの将来は、いくつかの企業に集中することになると述べた。したがって、それ以外の企業、特にスタートアップは、バーティカルなアプリケーションとの連携にもっと力を入れるべきだ。
Aiello は(OpenAI という)テック大手の肩の上に立ったケースであり、AVA でホテル業界のペインポイントを解決することで、テック大手の言語モデルのの助けとなり、Aiello は問題の解決に集中しやすくなる。ただ、ホテル客室1万室に設置された AVA に比べると、Vocol.ai には競合が多く、その優位性を証明するには、より多くの成功事例と付加価値が必要になるだろう。
【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup